昔から目の周囲をメイクの時に強調する傾向が、人間にはありました。歌舞伎や能、中国の京劇など、白塗りの顔に、目の周囲だけ黒や赤で鮮やかに縁取っています。相撲を見ていると、関取はメイクなどしていないのに、取り組みの前は互いに相手の顔を見合っています。互いに相手の目をぐっとにらむあの気迫は、勝敗を決するときの人間の集中している眼差しです。おもしろいと感じるのは、現代、プロレスラーで覆面を着用している人たちです。自分の正体を明かさないために覆面をかぶっているのですが、目鼻口の各部分に穴が開けてあるのは理解できますが、目の周囲に何らかの飾りステッチや特別な色が施されていることが多いのは、なぜでしょうか。まつげエクステは、この様な同じ延長線上に存在します。まつげエクステでまつげを強調し、まつげが囲んでいる目に相手の意識が集中するようにと招いているのです。まつげエクステは、マスカラやアイシャドウと違い、目そのものの縁取りではなく、目の前をかすかに覆うように生えている毛に対して行われ、そうすることでその奥にある目に力がこもるということになるのです。立体感覚のある演出と言えます。まつげの奥に見え隠れする視線が、まつげの瞬きごしに、何かを語っているからです。
